Track19 大団円

王国軍と遊牧民は多くの被害を出したものの、
結果的にはヒュルケンベルグ皇国そのものを地図上から消し去るという戦果をもって戦いを終えた。

軍が王都に戻る途上、最大の戦功者ファレッタについて、
敵国指導者の妹弟子であったことが発覚したため、
すべての褒章、勲章の類を与えないとの決定*1が王国内では下されていた。
また、ハイドフェルト王国からの追放も水面下で決まり、その通達が行われた。
しかしながら、ファレッタはこれを「大方の予想通り*2」と受け止め、
ハイドフェルド南端の町バウムガルトナー付近に立ち寄った際、
ハイドフェルド王国に入ることなく自主的に軍を離れている*3
この際、後処理の指示をルイーゼ・アドルファに行った*4

ルイーゼ率いる王国軍はおおよそ二ヶ月にも渡る大遠征を成功させ、王都に凱旋した。

最大の戦功者が不在だったが、凱旋式典には十万人の民が集まったと伝えられている*5

以上が、大陸中を巻き込んだ戦乱の詳細*6である。

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注釈

  1. 戦争の勝利よる軍部の発言力アップを懸念した文官らが提案。国王クレンペラー12世はこの決定に反対しなかったとされている。
  2. この言葉は、騎士隊長の一人で鳥人族のメニューインが確認している。彼の記述によると、「戦争が終わった後、目立ってしまった軍人の使い道は難しい。厚く遇しても、閑職に追い込んでも批判が出る。いないのは、一番都合がいい。採りうる策の一つだろう」と、ファレッタ自身が分析していたとのことである。
  3. この後、もう一度彼女が歴史の表舞台に姿を現すのは、23歳となった5年後になる。
  4. この頃、すでにルイーゼとファレッタは親交深かった。ルイーゼは王国の決定を覆すと約束しているが、ひっくり返ることはなかった。
  5. 当時のハイドフェルド王都の人口は約六十万人だったとの記録がある。王国軍のパレードの先頭はルイーゼ・アドルファが務めた。
  6. ハイドフェルド王国が周辺総ての国と刃を交え、最終的には黒幕であるヒュルケンベルグ皇国を滅ぼした。この勝利における軍師ファレッタの知恵の冴えは、現在でも語り継がれている通りであるが、歴史的資料にない誇張や捏造も含まれており、人物像が一人歩きしている傾向は否めない。今回の解説では、努めて事実を記すことを第一義としたが、それでもその成果は非常に大きい。ルイーゼ・アドルファやヒュルケンベルグなど、当時の有力者についても同様の一人歩きは見られ、特にヒュルケンベルグについては謎が多いことから創作作品に登場することが多い。
    また、ファレッタとヒュルケンベルグの師である天才軍師バイエルについては、「ヒュルケンベルグを南方に送り込んだのはバイエル本人であり、彼と共に大陸を手中にしようとしていた黒幕である」という大胆な仮説を唱えた歴史小説家が有名になったが、最近ではこれを支持する学者も現われている。
    この仮説は「新黒幕説」と呼ばれている。「新黒幕説」では、「ヒュルケンベルグに南方を治めさせ、自らはファレッタとともにハイドフェルドの実権を握るつもりだったが、その志半ばにして死亡してしまい、完結しなかった。もし、ファレッタがバイエルの目標を正しく理解していれば、大陸はバイエルの二人の弟子が治める統一国家になっていたであろう」とされている。これに対して、ジョアン・ファレッタ崇拝派の学者は「ファレッタが師匠バイエルの野望に気づかないなどありえない。あえて、その横暴なる野望を破壊したのだ。彼女こそ、大陸をバイエルとヒュルケンベルグの覇権から守った英雄である」と述べているが、歴史上の人物を必要以上に聖人君主化するのは避けるべきであるとの筆者の立場から、紹介するだけに留めておこう。