大陸中に軍靴が鳴り響き始めたのは、ある夏の日*1の事だった。
ハイドフェルド王国*2の辺境伯ハノン伯爵*3が武装蜂起。
王都ハイドフェルド*4に向けて進軍を開始した。
緊張関係にあった西方国との国境へ睨みを利かせるため、
王国軍の半数が王都を留守にしていたところを狙ったクーデターであった。
王都に残っていたハイドフェルド軍は、ハノン伯爵を侮って戦力を小出しに投入し、緒戦に惨敗する。
この軍事衝突を境にして、ハイドフェルド王国は大陸中を巻き込んだ戦乱*5の渦へと突入することとなる。
劣勢に立たされたハイドフェルドの国王クレンペラー12世*6は、
かつて天才軍師の名を欲しいままにし、隠遁生活を送っていたバイエル*7に助言を頼むことにした。
このことが、この戦乱の運命を大きく変えることとなる。
注釈
- ハイドフェルド王国の建国498周年にあたる。大陸暦紀元前123年。
- 大陸中央に位置する歴史ある国で、伝統ある君主制を敷いている。当時の大陸では一番の文明国で、雑多な種族が集まる他民族国家だった。クレンペラー家とドルンブルグ家の二つの王家の代表者から選抜して国王を選ぶシステムになっている。大陸中央のハイドフェルド平原は、肥沃な土地として繁栄の基礎となった。
- フレンツェン辺境伯ハノン伯爵。国土の北に位置するフレンツェン地方の有力者だったが、「さる人物」に唆されて王国強奪の野望に目覚めたと言われている。
- 国と同名の王都は、ヴェンドリン川に二分されている。東側は庶民が多く、西側は比較的裕福な層が住んでいた。治安は良く、国の内外から多くの旅人が訪れていた。
- 個々の戦闘とは別に、この時代の大きな軍事的な衝突の流れは「大陸動乱」と呼ばれる。また、この時代を「大陸動乱期」と呼ぶ。大きな広まりは見せていないが、「ハイドフェルド=ヒュルケンベルグ戦役」とされることもある。
- 当時59歳の国王クレンペラー12世は、絵画が趣味の老人だったため、優柔不断であり、肝心なところで神仏に頼る人柄だったと言われている。
- 天才的な戦術家で、ハノン伯蜂起の20年前までハイドフェルド軍の軍師だった。大陸外からの移民とも言われている。圧倒的な才覚ゆえに城内の貴族に疎まれ、それを苦にして隠遁生活を送っていた。その頭脳は国内で神話的な扱いになっており、窮地に立っていたクレンペラー12世は、その「伝説」にすがったのである。ある意味では神仏に頼るこの国王らしい行動だった。バイエルの死因については諸説あるが、現在の研究では暗殺されたとの説が有力。